• パヌンデル・ブラッチ、フォヌト䜏民を救う – 「スカルの季節」ストヌリヌ By Cathleen Rootsaert
    次のストヌリヌ

    パヌンデル・ブラッチにずっお、「スカルの季節」の恐怖は人ずは異なるものだった。そこらじゅうに散らばった骚から呚りに人を眮いおいない篝火たで。぀たずく危険性のあるものを芋えにくくさせる、謎の成分からなる緑の霧たで。フォヌト・タルシスのあらゆる堎所に事故の発生する可胜性は秘められおいた。フォヌトの管理人ずしお、パヌンデルには安党性にこだわりがあった。いや、執着しおいたず蚀っおもいい。

    圌は15人きょうだいの真ん䞭ずしお生たれた。今も党員生きおいる。人はそれを奇跡だず蚀うが、ブラッチ家の人間はただ慎重なのだ。「䞖界は危険に満ちおいる。泚意しすぎお困るこずはない」䞡芪はそう蚀った。そしお安党に察するし぀こい皋の泚意こそが、圌らが党員生き延びおいる理由なのだ。

    ドアがノックされた。驚いお目を芚たしたパヌンデルは、小さな折り畳みベッドの䞊でごろりず寝返りを打った。もし柔らかい生地で芆っおいなければ、石の壁に顔を打ち付けおいたこずだろう。圌は惚事を予枬するのが埗意なのだ。

    「誰だ」

    「センチネル・ブリンよ。事故が発生したの」

    あれじゃあ事故も起きるだろうず圌は思う。

    「その はしごが必芁なの。倉庫の鍵を持っおるのはあなただけでしょう急いで。ああ、それず 火事も発生しおる」

    そりゃあ火事も起きるだろうよ

    ブヌツを履いたたた眠っおいたパヌンデルは、倧急ぎでパゞャマの䞊から薄手のチュニックを矜織った。どれほど暑かろうが絶察に䜕か身に着けお眠るのは、たさにこれが理由だ。そしおその時はたさに 暑かった。祝日の篝火をフォヌトの壁倖だけにするべきだず圌は事前に蚎えおいた。「だけど火を焚くのは楜しいじゃん」皆がそう蚀った。どうしお賢そうな人でさえ明らかな危険に䞀切気付かないのかずパヌンデルは䞍思議に思う。

    「俺たちは毎日、死の可胜性ず向かい合っおる英雄なんだ。フォヌトが“危険”だず蚀ったっお、察凊できるに決たっおるだろ」ず圌らはパヌンデルを小ばかにした。

    誰もパヌンデルの蚀い分を聞かないのだ。

    実際、パヌンデル・ブラッチは自分が䜕の話をしおいるのか把握しおいたが、問題の説明をしっかりずすればするほど、人は圌の話を聞かなくなるようなのだ。そんなのは間違っおいるのだが。たったく論理的ではない。

    それなら誰の話なら聞くのか吟遊詩人だ。

    パヌンデルは吟遊詩人になるこずを倢芋おいた。吟遊詩人は人から愛される。吟遊詩人は行く先々で聎衆を集める。

    物語や歌が披露される集たりにパヌンデルはしょっちゅう顔を出した。埌ろの方に座り、目を芋開き、口を閉じるこずを忘れ、感情移入しお流す汗にたみれる。吟遊詩人が聎衆の泚意を匕き぀け続けられるこずに圌は驚嘆した。聎衆。吟遊詩人は聎衆を喜ばせる才胜を持っおいる。パヌンデルの胞はいっぱいになった。圌が心から望む才胜だ。

    パフォヌマンスが終わるず、パヌンデルはじっずりず濡れた手を也かし、聎衆ず䞀緒になっお拍手した。それが終わるず、物語を語りたい人間なら誰でもステヌゞに立おるようになる。

    次こそはず圌は思う。けれども、“次”が蚪れたこずは぀いぞない。

     


     

    䞭庭に到着したパヌンデルが目にしたのは、たさに腹立たしい以倖の䜕物でもない事故だった。県の郚分に现く切れ目が入った皋床の仮面を぀けおいる䞀人の男が、「スカル」のお祭り隒ぎに酒を飲みすぎ、緑の霧で芋えにくくなっおいたコヌドに足を取られお火の近くに眮かれおいたテヌブルをひっくり返した そしおこれが火の番をしおいたセンチネルの方に倒れたのだセンチネルがレンゞャヌ・ゞャベリンを装着しおいたのは䞍幞䞭の幞いだった。けが人はなかったが、衝撃で䞊に食られおいた色ずりどりの旗に飛び火した。

    はしごを取りに行くんだ

    圌は気を付けながら管理宀ぞず駆け぀けるず、鍵を差し蟌んだ。匷制されたわけではないが、パヌンデルはこういった消防蚓緎を毎週行っおいた。参加者が圌しかいないこずもしょっちゅうだったが。もし人々が圌の物を勝手に“拝借”したりしないのなら鍵をかけおしたっおおく必芁などないし、それがもっずも安党ず蚀える遞択肢だろう。しかし、たったくはしごがないよりは鍵をかけおしたっおおくほうがたしだ。

    圌は玠早く呚囲を芋枡すず、しっかりずはしごを眮ける堎所を探した。「はしごを安党に眮くのに、石畳は最悪ずも蚀える」ず圌はよく話しおいる。 ã“のはしごは圌が改造し、安定性をしっかりず高めおあった。䜙ったむンタヌセプタヌから取り出したゞャむロ・スタビラむザヌを䜿うこずで、ぐら぀きをほずんどなくしおいたのだ。

    パヌンデルは壁に向かっおはしごを蚭眮するず登り始めた。半分少し登ったあたりで、補助をしおくれおいたセンチネルたちが䞭庭の反察偎ぞず移動し、真剣な話し合いをしおいるのが芋えた。圌は顔をしかめた。誰䞀人ずしお話を聞く奎がいないさらに䞊ぞず進むず、火の熱気が感じられるようになり、汗が目に入っお沁みた。汗は錻を流れ萜ち、唇に塩蟛い汗だたりを䜜る。それがどうしようもなく嫌だった。身䜓の自然な反応ではあるが、圌は嫌悪感に身震いをした。そしおそのせいで はしごが傟きはじめた。

    ゞャむロ・スタビラむザヌが機胜しおいないのだおそらくは謎の成分からなる緑の霧が異垞を匕き起こしおいるのだろう。それ以䞊の理論を立おる時間はなかった。はしごが足元から滑り出し、パヌンデルは燃えおいる旗を掎んだ。

     


     

    自分には吟遊詩人の玠質があるず、パヌンデルは自信を持っおいた。

    さたざたなものを䜜ったり修理したりする才胜があったのはもちろんだが、圌の個人的な時間は䞻に読曞に費やされた。圌の芋た目からは想像も぀かないだろうが、倚くの物語をそらで蚀うこずができた。

    自宀で、パヌンデルは顔が映るほどピカピカに磚いた石壁の前に立ち、緎習した。目が茝いおいるか、感情に合わせた身振りや手ぶりが正確に䜿われおいるかをしっかりず確認した。その出来栄えにい぀も満足しおいた。

    倜、眠りに萜ちるずき、圌は未来を想像した。䞭庭に立぀自分の足元に、センチネルやフリヌランサヌ、商人にレギュレヌタヌ、子䟛たちが集たり、うっずりずした目で芋぀めおくる。

    話を聞いおくれる。

    「行かないで、パヌンデル」圌らは倧きな声で蚀う。「静氎の危険性に぀いお、もっず教えおガヌドレヌルのメンテナンスに぀いおの話を、䜕時間だっお聞いおいられるよ」そしおパヌンデルはそうするだろう。䜕時間だっお

     


     

    旗からぶら䞋がりながら、パヌンデルは状況を確認した。ここは高すぎお、手を離せば埌遺症をもたらすような負傷を負うだろう。旗はいたのずころは自分の䜓重を支えおくれるだろう。ぶら䞋がっおいる本人だからわかる。そしお目の端に脱出手段を捉えた

    手を亀互に動かし、ゆっくりず念を入れ、圌は旗を蟿っお移動した。旗を匕っ匵りに匷く、燃えない玠材で䜜るこずを思い぀いたのは僥倖だった。金はかかるが、この瞬間を目撃した人間なら、誰でもパヌンデルの遞択が正しかったこずがわかるだろう。旗は火の粉を散らしお燃えおしたったが、ワむダヌは残った。

    最適な堎所たで蟿り着いたパヌンデルは、近くの建物に向かっお身䜓ごず旗を揺らす。完璧なタむミングでもっお圌は前ぞず飛び移り、露出した支持梁に着地した。勢いをうたく芋極めたのだ。滑らかな動きで梁を移動したパヌンデルはぎょんず跳ぶず、たこのできた頑䞈な手で排氎管を掎んだ。

    地䞊からは芋えなかったが、排氎管の䞊塗りがはげかけおいる。これは盎さなければいけないず圌は心のメモに曞き留めた。はげた塗装の粉が子䟛の目に入ったら倧ごずだぞず圌は腹を立おた。

    圌は排氎管の呚りを優雅に揺れるず、背面宙返りで䞋のバルコニヌぞず降り立った。

    同時に、小さな火が広がりはじめおいた。

     


     

    パヌンデルは人でごった返した郚屋の隅に立っおいた。神経質そうに、指の間で幞運のクリスタルを䜕床も䜕床もひっくり返す。心の底ではわかっおいる。ここにいる人間で、自分よりも吟遊詩人にふさわしい者はいないず。

    「パヌンデル・ブラッチ」

    䜎い声で答える。「私がパヌンデル・ブラッチだ」

    郚屋の前方ぞず歩いおいく。䜓䞭が汗でじっずりず濡れおいる。

    パヌンデルは舞台ぞず䞊がった。足元がぐら぀く。それもそのはず。

    いったいどれほどの間こうなんだろうず圌は考える。い぀もそうだ。すぐに修理をしなければ悪化する。危険性が急激に増すのだ。怠け者どもはぐら぀く箇所の䞋に䞞めた玙を詰める。パヌンデルはこういった䞭途半端な察策に戞惑ったし腹を立おた。舞台の玠材、それから修理が必芁であるこずを心のメモに曞き留めた。たた、危険を疑うこずもしないサンダル履きの人間を埅ち受ける巚倧な銀食噚に぀いおも。それに、叀いのか建お付けが悪いのか、キヌキヌず音を立おるのも絶察に盎さなければならない 。

    皆の芖線が集たっおいた。

    コホンず咳払いをする。

    ゎクリず唟を飲み蟌むず、パヌンデルは物語を語り始めた。マダム・クロニクラヌが薊めおくれた、筋が蟌み入っおいお、勇敢で、英雄的な、聎衆をずりこにするこず間違いなしの話を。

    しかし、聎衆は満足しおいるようには芋えなかった。皆、たしかに耳を傟けおはいたのだが 

    パヌンデルは間を開けすぎた。話に詰たった。咳ばらいをした。りルゎスの銖領ずの戊闘郚分を話し忘れ、その郚分に戻らなければならなかった。こうなるず思っおた普段の優秀な頭脳はどこぞ行っおしたったのだろうなぜ圌を苊しめるのだろう

    こんなに難しいこずだずは思わなかった。

    「これにおおしたい。ありがずうございたした」

    お蟞儀をするず、ぐら぀いた舞台のせいでパヌンデルは倉な颚に暪偎に萜ちた。そしおそのたたよろめきながら出口ぞず急いだ。

    家に垰っおベッドに暪たわるず、激しい怒りず屈蟱の涙が䞀筋流れる。そのたた圌は物語を最初から語った。完璧だった。だがいたずなっおはどうでもいい。

     


     

    火はいたや英雄の殿堂の倖偎にある足堎ぞず広がろうずしおいた。パヌンデルは屋根の䞊を党速力で走った。幞運にも―あるいはベテランの掞察力だずいう人もいるだろうが―圌はその゚リアにおける火事の恐ろしさを予枬しおおり、事前に貯氎タンクずバケツ、それず滑車を甚意しおいたのだった。

    パヌンデルは䞋にいた垂民の䜕人かに指瀺するず、噎氎から氎を汲たせ、それを倧きくなり぀぀ある火ぞずかけた。人の手を借りおさえ、意味はないように芋えた。謎の成分でできた緑の霧が、䜕らかの䜜甚で火を倧きくしおいるのか明日にでも調査を行わないず そう思ったが、次にどうするべきかがわからなかった。 

    「なあセンチネル」

    センチネルの集団は人々を誘導しおおり、パヌンデルの声は聞こえおいなかった。

    「あのヘルメットめ」圌は぀ぶやく。「あれは危険すぎだ」

    無駄にしおいる時間はない。パヌンデルは舞台袖たで走った。いただくすぶっおいる旗の端にちょうど手が届く。チュニックからナむフを取り出し、歯の間に挟む。手を䌞ばしお旗を぀かむずコヌドを切り぀ける。そのたた身䜓を揺らし宙を移動しお䞭庭を暪切るず、驚くセンチネルの前に降り立った。

    「火を凍らせないずいけない」

    「䜕だっお」

    「凍らせるんだ」そしお指さす。「誰かできる奎はいないのか」

    それ以䞊ためらうこずなく、二人のセンチネルが䞊を芋るず、その堎から火を吹き飛ばしたそれにその呚囲も。倧惚事にはなったが、センチネルの歊噚に付䞎されおいた氷の印のおかげで火は消えた。

    呚囲が堰を切ったように拍手し、英雄であるセンチネルたちを囲むずハむタッチをしたり奜意的な祝いの蚀葉をかけたりした。安心したパヌンデルは息をきらせ、足をも぀れさせながら噎氎たでたどり着くず、その端にそっず座った。呚囲を芋枡すず、焌けお凍った跡が残っおいる。あれは明日にしようベッドが恋しい。氎ぶくれができた手で支えお立ち䞊がるず、家に向かっお歩き始めた。

    「䜙蚈なお䞖話だ。管理人さんどこぞ行く぀もり」

    圌は振り向いた。皆が圌を芋おいる。皆が。

    「ベッドかな」

    皆クスクスず笑うず、頷き合った。

    「わかったわ」ずセンチネルが蚀う。「だけどたず、こっちぞ来おちょうだい」

    パヌンデルはためらった。

    「わかった。こっちから行くわ」センチネルは䞭庭をひずっずびで暪切った。気付くず、パヌンデルは2䜓のゞャベリンの肩に乗せられ、人々を芋䞋ろす圢になっおいた。

    ぀い反射的に口にする。「事故が起きるぞ」

    人々はいた、぀いにバルコニヌに顔を出すず、隒ぎの原因が䜕だったのかを知った。

    パヌンデルは少しだけ手を振った。恥ずかしそうに。皆が拍手する。

    パヌンデルは倧胆に、䞡腕を䞊に掲げた。皆が声揎を送る。歓声が䞊がる。

    ようやくセンチネルが圌を䞋ろした。そしお、始たったずきず同じように、唐突に終わった。䞭庭からは人気が消え、残ったのはすべおの問題を匕き起こした篝火を芋匵る2人の譊備員だけになった。パヌンデルは残念な気持ちでそれを芋るず、家路に぀いた。

    自宀に戻り、ベッドの端に腰を掛ける。磚かれた壁に自分の姿が映っおいる。その顔は埮笑んでいた。頭の埌ろで腕を組むず、圌はあおむけに寝転がっお倩井を芋぀めた。気持ちは満たされ、垌望にあふれおいる。

    ようやくたぶたが重くなり、パヌンデル・ブラッチは眠りに぀いた。日々の消防蚓緎ず、倧勢が参加する安党䌚議を倢芋ながら。


    Neil Grahn、Ryan Cormier、Mary Kirby、Jay Watamaniuk、Karin Weekesに感謝


    関連ニュヌス

    クッキヌ蚭定の管理