サイファーの口づけ:選択式ショートストーリー
By Cathleen Rootsaert
秘密の継続
君はアンミアンの手をつかんだ。「愛をあきらめることはできない」
「私も君なしでは生きられない」と、頬にまつ毛が触れるぐらい顔を近づけて、アンミアンはささやいた。
影の中を忍び足で二人は家に戻り、朝まで一緒に過ごした。
数週間が過ぎた。二人の愛はどんどん深まった。正直に言えば二人の関係が秘密であることがロマンスをさらに盛り上げて、嘘の罪悪感をなくしたのだ。この上なく幸せだった。厳しいはずのバスティオンでの暮らしが、君とアンミアンにとっては甘美なものへと変わった。
しかし、「具現者の遺跡で未来を築くなかれ」という諺にもあるように、二人の関係は時限爆弾だった。
普段ならアンミアンとの繋がりから来るうずきや気晴らしを楽しむことすらできた。だがある日突然、悲劇が起こった。
君は新人のフリーランサー・ソーンと任務についていた。「暴虐の渦」の近くにある具現者のレリックを鎮めるという、日常的な仕事だった。君達は狭い洞窟の奥深くに入り込んだ。溶岩の川から巻き上がる熱気と蒸気が視界を遮った。サイファーの助けがなければ、前に進むことは不可能だった。その日のサイファーはアンミアンだった。
経験の浅いフリーランサー・ソーンには、手に負えないような厄介なレリックだった。何度試みても、君はレリックを鎮めることができなかった。暴れ回る天変地異から、タイタンが次々に出現した。ソーンはパニックを起こし、恐怖で凍りついていた。任務を完遂することは無理だった。時間がかかりすぎていた。アンミアンは「賛歌」に対して脆弱になっていた。それは危険な徴候だった。
「きれいだ… 私の心はそれに近づくことを求めている」
「アンミアン、ダメだ!」君は救難信号を送った。
死力を尽くしてタイタンを攻撃しても、彼らは容赦なく君を叩き落とした。ランサーは君一人だった。不安定なレリックと怪物の出現のせいで、事態はさらに深刻になった。いつになったら支援が来るのだろう? 突然、フリーランサー・ソーンを助けなければいけないという使命感と、君の心を永遠に奪ったアンミアンへの思いに引き裂かれて、君はロックした。体が洞窟の壁に叩きつけられ、岩の裏側へと滑り落ちた。
気が焦るばかりで、君は何もできなかった。
フリーランサー・ソーンが巨大なタイタンに踏みつぶされても、体はジャベリンの中で固まっていた。アンミアンが「賛歌」の死の声と闘っている間も、スーツの中でロックしていた。救難要請を聞いて駆けつけた二人のフリーランサーが、事の経緯を瞬時に理解したときも、ロックしたままだった。彼らは急いで君のミスをフォローしてくれた。
最終的にレリックは鎮められ、タイタンは敗北したが、犠牲はあまりにも大きかった。フリーランサーが二人死に、もう一人は重傷を負って昏睡状態に陥った。そしてアンミアンはかろうじて狂気の瀬戸際から脱出した。
その日の夜、君とアンミアンは暗い路地で会った。二人で泣きじゃくり、抱きしめ合った。君達が発見され、罰を受けるのは時間の問題だ。昏睡状態のフリーランサーが目覚めたら、彼女は見たことをすべて話すだろう。二人は居住区から追放される。おそらく殺人の罪に問われるだろう。一つ確かなのは、君達はもう二度と会えないということだ。
「見つかる前に一緒に逃げよう」と言った。
「どこへ?」
「レギュレーターの友達がいるんだ。ここから遠く離れたどこかで、新しい人生を始めよう」
アンミアンは暗い目をして首を振った。「もっと簡単な解決方法がある。意識が戻る前に、あのフリーランサーを殺せばいい」
一晩中二人で話し合い、結論が出た。