現実の遺跡

アーラサンの森では、何かがおかしくなっている。暴れる枝に頭を切り裂かれそうになったストレイフにとって、それは自明だった。葉は鋸歯状の刃となっていたため、彼は頭蓋骨を失わないように耳を犠牲にした。

しかし銀髪のエルフを悩ませたのは、耳の痛みではなかった。森で無駄にしたこの三日間のことでもなかった。彼は確かに北へ向かったが、自分が南に向かっていたことを知った。そして、太陽が一度しか昇って沈まなかったことでもなかった。すべての隠された道、洞窟、エルフの遺跡が詳細に書き込まれ、いつでも頼りにしてきたアーラサンの森の古地図が、もう頼れなくなったことでさえなかった。かつては1時間もあれば十分だった峡谷を越えるのに、5時間かかった。何が起きたのか、地形そのものが引き伸ばされていた。形を変えたのだ。残忍な枝など、警戒するほどのものでもなかった。彼は以前、"憤怒"の悪魔に憑依された木であるシルヴァンを倒したことがあった。それは大した問題ではない。問題は急に見えてきた不可解な光景だった…

自分自身。ストレイフだ。茂みを越え、血に飢えた森を避け、いつも通りに急いで来たのは…もう一人の自分だった。もう一方のエルフは、風化した蔦が這う石柱の後ろに隠れていた。革に綴じられた日記を見ている。 彼が持っているのと同じ日記だ。モーリン族の遺物で、代々受け継がれているものだ。先月、伝承者から新たにストレイフへ渡された。謎めいた記述が勝手に現れ、アーラサンの森の聖なる遺跡について記述した。中には強力な力があるアーティファクトがあるそうだ。

ストレイフは遺跡を見ていた。反対側から、彼の偽者も見ていた。どちらもエルフの女神ギランナンの像に釘付けになっていた。 クリスタルのハラ像を掲げていた。ちょうど日記に書かれているように。   

「何だこれは？」それ以外の思考は浮かばなかった。答えは得られなかった。ギザギザの枝が偽者の後ろに向かっていた。木が唸り、もう一人の自分は遮蔽を求めて飛び込んだ。その時ストレイフは、自分にも同じ運命が待っていたことに気づいた。ピュン！奇妙なデジャブのように、枝が後ろで割れた。鋭い枝にもう少しで突き刺されるところだった。 

「彼は実在しない」近くで声がした。「蜃気楼のようなものだ。もしくは木霊か」ストレイフが振り向くと、魔力で輝く狼の姿があった。光が収まると、彼の変身するエルフの仲間、イレリンが立っていた。「昨日のことだった。狼の群れが見えた。狼は全員が私だった」

「何だと？ 一時間前におまえを見たぞ」

「この四日、あなたを見ていない」どちらのエルフも、互いに恐怖の感覚を共有しながら見つめた。これは古代の魔法の仕業だ。とても古い。「急いで。消える前に。左よ！」

ストレイフは左に走った。彼女に何か考えがあることを信じて。鏡のような状況で、彼の木霊も響いた。そして恐ろしいシルヴァンの注目を引いた。明らかに、囮にされていた。

「餌にする気か！」ストレイフは大声で訴えた。 

「あなたには予備があるでしょう！」キャンプで会いましょう！」イレリンは空中に飛び上がり、巨大な鷲に変身しながら叫んだ。ストレイフが無慈悲な木々の注目を浴びている間、イレリンは鉤爪でギランナンの手から小像を奪った。その像は容易に離れなかったが、イレリンも諦めなかった。怒りの叫び声を上げ、彼女は像を手にして、空に姿を消した。

もう一人のストレイフは消えた。シルヴァンは沈黙していた。呪文は破れたのだ。だがストレイフには、これが前兆だとわかっていた。 

アーラサンの森では、何かがおかしくなっている。