• MASS EFFECT™ LEGENDARY EDITION ビジュアルの改善 グラフィックアップデート、変更、追加

    皆さん、お帰りなさい!

    「Mass Effect」のアートが、世界を彩り豊かなストーリーやキャラクターを完全に理解できるようにします。直感に反しているかもしれませんが、アーティストとして、特にこのリマスター版では、アートに目を逸らされることなく、この三部作を再び、または初めて体験ししてもらいたいと考えたのです。 

    当初の目標は、過去数十年に渡って余りにも象徴的でジャンルを代表する作品となった三部作のスタイルを維持しながら、ビジュアルの改善と強化を行うことでした。リメイクではなくリマスターなので、オリジナルのアセットを基に開発を行いました。これは通常の開発サイクルにおける仕上げの過程に似た作業でしたが、同時に最新のハードウェアとソフトウェアを活用することができました。 

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    このブログでは、リマスターの過程で加えられたビジュアル面での主要な変更点と改善点を詳しく見ていきます。以下が内容になります:

    ゲーム開発の技術面に興味がある方は、変更可能なアセットやシステムを変更すると別の要素が破綻する可能性がある(又は確実に破綻する)、という意見を聞いても驚きではないでしょう。最終的な状態にあるゲームというのは、大体においてカードで作った家に似ています。エンジンのバージョン更新など根本的な変更は言うに及ばず、ちりを払うといったシンプルなプロセスでさえ、間違いなく予期せぬ問題を引き起こすのです。ゲーム単体のリマスターは、意外にも複雑なプロセスです。そのため 3つのゲームを完全に開発しなおす際に、なるべくリスクを軽減できるよう適切な計画を練ることをまず考えました。 

    三部作のリマスターは段々階のアプローチを取りました。

     


    Lazarusプロジェクトは計画通りに進みます」

    フェーズ1:基礎の構築

    フェーズ 1では、三部作の全アセットを特定して目録を作ることから始めました。実際どれくらいのパーティクルエフェクト、3Dモデル、テクスチャ、レベル、GUI(グラフィックユーザーインターフェース)の要素、サウンド、シネマティックムービーが三部に共通し、その品質レベルは平均的にどれほどか?ソースアセット(コンテンツ作成ファイル)は残っているのか?どれくらいの割合のアセットを改善すべきか、そして平均的に見て、各アセットタイプの改善にはどれくらいの時間がかかるか?厳密なアセット数とその品質レベルを知ることにより、各アセット「タイプ」を改善する上での戦略を練りました。

    オリジナル三部作は完全にコンソール機でリリースされたため、最大解像度は1080pになりましたが、実際は720p以下で動作することが多かったのです。今回のリマスター版は4K解像度が可能なハードウェアでリリースします。というわけで、どれだけのテクスチャを改善したいのか、という質問の答えは簡単でした。すべてです。三部作には、3万を優に超えるテクスチャがあります。

    まず、テクスチャのサイズに関するエンジンの上限を増やしました。そのおかげで、ディスクでは実際に実現可能な範囲より大きめに作成されたテクスチャも完全な解像度で表示できるのです。次に、AIの更新プログラムと組み合わせていくつかバッチプロセスを作成しました。オリジナルの非圧縮テクスチャを本来の作成サイズの4倍に拡大しました。特殊なテクスチャタイプの有効性を維持して、通常のマップやマスクなどの色がお互いに損なわれないように、当社のバッチツールは特別な工程を実行します。

    また、これまでにディスク上でより高クォリティのテクスチャが実現できる、新しいテクスチャ圧縮技術を使ってきました。一方、プログラマーはUnreal Engine 3のバージョンアップデートに注力していました。より統一された最新バージョンへのアップデートに取り組んでいたのです。ゲームが再びプレイ可能になり、基本解像度が大幅に上がったところで、自分たちの手でアセットの改善を行う作業を始めました。 

     


    プロセス結果と同じくらい重要です」

    フェーズ2:現代化への取り組み

    フェーズ2は、フルスケールと見做してもいいような開発の始まりでした。この段階でアートチームがフル稼働の状態になり、コンテンツ作成ツール(その多くは当然ながら三部作を通じて変化し、改善されています)は使用され続け、統一され、より現代的なコンテンツ作成プログラムと共に使用できるように改良されました。我々は最も大きな改善が必要な部分から作業を開始しました。オリジナルの「マスエフェクト」です。

    一部のアセット(ほとんどの場合、キャラクターや一般的な小道具でしたが)はゲーム間で共有されており、その多くは後のタイトルやDLCで既に改善されていました。そういった場合、原則的には改善されたアセットをベースとして使用し、さらに改善して、三部作全体に移植しました。これにより一貫性があり、より質の高いアセットが作成されましたが、このプロセスにより時間経過の感覚が希薄化しないよう気を遣い、ストーリー全体が平板にならないように心がける必要がありました。

    リアラ、ギャレス、ケイダン、アンダーソン大佐など三部作すべてに登場するキャラクターについては、三部作の中で年齢を重ね、大人になり、あるいはロケットに当たったなどに合わせて多少の変化を出しています。どう考えても、「SR2」のマークが付いたユニフォームをちゃっかりノルマンディーSR1のクルーに着せるわけにはいかなかったのですが、三部作が進むにつれて同盟海軍本部のユニフォームが軍服風になり洗練されていくのは気に入っていたので、それぞれのバージョンを別々に改良することにしました。

    弊社のキャラクターアーティストが、本三部作全体を通した数百ものアーマー、クリーチャー、キャラクター、武器、ビークルの優先順位リストを処理しました。制作ではしばしば、アセットを元の高ポリスカルプションに引き戻し、一貫性のあるテクスチャ解像度を得ることに注力したり、必要に補助的な3D配列を加えたり、ベイクされたノーマルマップやテクスチャマッピングのエラーを修正したりしていました。主にリアル感を増すことに取り組んだのです。

    ゲームではPBR(物理ベースのレンダリング)を使用しませんが、テクスチャや素材に関してはプラスチック、布、金属がよりリアルに光を反射するよう取り組みました。同様に、三部作全体における肌、髪、目のシェーダーを改善するためにかなりの時間を費やしました。それから、弊社のテックアニメーターが改良された各メッシュのスキンを修正し(例:アニメーションの骸骨に取り付けられた場合、各頂点が適切に動くように設定する)必要に応じて各ゲームにインポートし直しました。

    VFX(パーティクルエフェクト)アーティストは発煙や炎などのアニメーションの範囲や滑らかさを拡大し、さらにそれぞれの効果が全体的に強化されるようにさらにセカンダリエミッターを追加しました。火の場合なら、二次的な煙のたなびき効果とスパークが追加され、爆発なら大量の瓦礫が飛び散り、武器のマズルフラッシュならシェパードとその周囲を微かに照らすようになりました。三部作全体を通して新しい環境パーティクルエフェクトが追加され、雰囲気と宇宙における生活感をより良く表現します。すでに多くの方がお気づきでしょうが、三部作の特徴的な水平方向のレンズフレアに、よりシャープになった2つ目のエレメントが追加されています。

    多くのGUIイメージにも改善が施されました。4Kでは滑らかなラインを見ることが可能で、以前は画面上に数百ピクセルしかなかったものが、数千または数万ピクセルにまで拡大されています。必要となる明瞭性や鮮明さを得るために、多くのエレメントをベクター画像から再構築する必要があり、他にもイメージを鮮明化してアーティファクトを取り除くために、手動の二次的なAIプロセスを導入しています。

    また、 三部作のすべてのシネマティックスが改善されています。プリレンダリングのカットシーンは可能な限りすべて4Kで再レンダリングしており、再キャプチャーが不可能な場合は、オリジナルの非圧縮動画にAIのアップスケーリングプログラムを適用しました。どちらのワークフローでも色補正を調整し、ディテールや視覚効果の追加や合成を行っています。また、実際のゲームプレイと比較したときに古臭く感じることがないように、フレーム単位でエッジを滑らかにしています。ライブアクションのカットシーンと会話のシーンでは、数百とまではいきませんが、シネマティックのデザイナーが数十個のバグを修正しています。ただし、ご心配なく。「何だって?」の頭が回転するネタは残しています。

    このフェーズにおいて、エンバイロメントアーティストが三部作の各レベルのチェックを行い、全体的な体験の邪魔になるようなアセットやロケーションに集中的に修正を行いました。特に殺風景だと感じられる場所にオブジェクトを追加したり、低解像度だったり引き伸ばされていたテクスチャをリメイクしたり、ギザギザに見える3Dアセットを滑らかにしたり、現代的なシェーダーを利用して、物体の表面のライティングの反応を改善しています。この時点で、浮いているアセットなどのマイナーなバグから、コリジョンの問題などのゲームプレイに影響のある大きなものまで、数百のバグ修正に取りかかりました。これにはプレイヤーがアセットの上にテレポートして動けなくなるなどといった頻繁に発生するグローバルな問題も含まれています。

    レベルアーティストと協力して、ライティングのデザイナーも、美しい背景やキャラクターが常に十分なライティングを受けて表示されるように確認を行いました。「Mass Effect」のライティングでは、ハイコントラストなスポットライトと補色の多用が特徴となっています。このスタイルは三部作を通して大幅に改善されているので、これらの多くの改良点を1作目に遡って適用しました。ハイコントラストな見た目を維持しながら、ナチュラルな反射光を追加して、キャラクターが安定的に光で照らされて美しく見えるようにしました。

    システム全体に影のアップグレードを行い、スクリーンスペースアンビエントオクルージョン、アンチエイリアシング、被写界深度のぼかし効果(焦点が外れたカメラのシネマティックな品質を向上)など、ポストプロセスエフェクトの追加と改善を行っています。また、「Mass Effect 3」で使われていたエンジンの機能を適用することが可能になったので、最初の2作の見た目がダイナミックボリューメトリクスで統一されています。

    三部作では新しいリアルタイムのリフレクションが採用されており、ゲーム内の鏡面に反射する改善されたキャラクターを見る機会も増えています(IGNによる、こちらの素敵な動画で見られるノルマンディー号の素敵な水槽など)。 

     


    「文化的でアーティスティックな表現に、哲学的な進化が反映されています」

    フェーズ3:世界の再構築

    フェーズ3では、個々のアセットをアップデートするだけでなく、レベルや機能に対して、より幅広い改善を行う機会を探しました。この時点で数千におよぶアセットを手作業で改善していましたが、最初の2作の間でもクォリティは飛躍的に向上していました。 

    この取り組みのガイドとすべく、製品版のレベルとオリジナルのコンセプトアート、デザインの意図、アーティスティックなインスピレーションなどを比較しました。また、現在の高解像度化されたレベルの複数のスクリーンショットを撮影して、Derek Watts(「Mass Effect」三部作のアートディレクター)に送り、彼がこれを元にして新たなコンセプトアートを書き直しました。この「大きな筆」の調整は、プロフェッショナルなフォト編集ソフトウェアでは素早く作業が行えます。

    その一部を以下にご紹介しています。

    フェロス には、コロニーやExoGeni Corporationの建物に繋がるハイウェイ、用水路、トーリアンの巣など、見た目に特徴的なセクションがいくつも存在します。前者は煙や炎のエフェクトが強化されて、スカイボックスにより多くの建物が追加され、ゲスの襲撃を示す、破壊や瓦礫の描写が追加されています。また、トーリアンの謎を解き明かすためにプレイヤーを導く、指向性のライトシャフトを追加して、不気味でダークな内部のビジュアルの雰囲気も強化しました(新たなオーディオミックスにより、サウンドでも不気味さが増しています)。

    エドモントンの人たちは恐ろしい見た目の建築物や猛烈な寒さには慣れっこなので、ノヴェリアはいつだって故郷のように感じます。レベル全体を通してライティングがリワークされて、外の嵐は強化されています。また、ミッションの序盤の移動でプレイヤーが迷いにくいように、ホテルのエリアとSynthetic Insightsのラボの違いも強調しました。

    エデンプライムはプレイヤーがMass Effectで最初に訪れる場所です。未知のエイリアンの宇宙船に襲撃された緑豊かな楽園の惑星と説明されますが、そのビジュアルは必ずしもそのイメージにふさわしいものとは言えませんでした。幸いなことに、「Mass Effect 3:From Ashes」DLC(もちろん、これもLegendary Editionに含まれています)で既にエデンプライムのリビルドが行われていたので、 全体的な雰囲気や一部の建物を利用することにしました。太陽の位置を移動させて、 プレイヤーの前方に存在する道が夜の灯りで照らされるようにする一方で、背後には真っ赤に燃える空が覆いかぶさり、降ってくる灰やトレーサーの炎でアクセントが付けられています。また、惑星の地表も改善されており、炎や戦禍の跡、植物、ソヴェリンが残したクレーター内に散乱する破壊された建物などが追加されています。 

    このフェーズでは、無数のQoLの変更および機能の改善が段階的に行われました。その多くは過去のブログで詳しく説明していますので、ぜひお読みください!注目すべきは、1作目のHUDが新しくなったことと、三部作を通してUIが統一されたことで、1作目でもテックUIは青、バイオティックUIは紫で表示されています(元々は逆になっていました)。キャラクターカスタマイズシステムも統一されて大幅に強化されており、Mass Effect 3で人気のカジュアルな服装を Mass Effect 2でも利用可能になっています。


    「私はシェパード少佐だ。ここはシタデルで一番の店だ」

    「Legendary Edition」の作業を始めたとき、私たちはノスタルジアと好奇心の両方を感じました。アートとストーリーの組み合わせで、この魅力あふれる世界が作り出されたことは、本当に特別なことだと思います。これらの作品には「魂」があります。私たちは意義のある改善を行いながらも、オリジナルの雰囲気や感覚は維持するという、ちょうどいいバランスを取ることができたと感じています。発売まで一ヶ月を切りました。皆さんが改善された三部作をプレイして、「Mass Effect」の新たな思い出を作ることを楽しみにしています!

    お読みいただきありがとうございました。

    それでは幸運を、少佐殿!

     

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