「Dead Space™」開発秘話 #5:ストーリーの重要性
「Dead Space」リメイク版を手掛けたMotiveのクリエイティブチームが、優れたストーリーの重要性と、オリジナル版のストーリーをどのように進化させたかを語ってくれました。
前回の「Dead Space™」のブログでは、優れたホラーゲームを作るにあたり、雰囲気と緊張感がいかに重要かをお話しました。もちろん、他にも重要な要素はあります。優れたゲームには、最高の体験ができる瞬間と瞬間を強く結びつける要素が必要です。プレイヤーのモチベーションを高めて、先に進んで次の謎を解きたくなるように思わせるのが重要なのです。言い換えれば、優れたゲームには優れたストーリーが不可欠となります。
幸いなことに、Motive™の開発チームは 「Dead Space」のリメイクにあたり、既に存在するオリジナル版の素晴らしいストーリーをベースに作り始めることができました。誰もが知っている、普遍的なテーマに基づいたストーリーです。「最愛の人を救うために地獄へと身を投じるストーリーです。」とシニアゲームライターのJo Berryは言います。「最も古くから存在するストーリーの一つです。ただ、企業の腐敗、宗教的思想の捻れ、分裂と再結合といった内容で展開される『Dead Space』には、こういった普遍的なストーリーが非常に適切なのです。」
「それは、人間が共有する恐怖にも影響してきます。」とリアライゼーション・ディレクターのJoel MacMillanは言います。「未知、孤立、パラノイア、非人間化などへの恐怖は、すべての文化、コミュニティ、世代に通ずるものです。これらは、細胞レベルで私たちの中にしみ込んでいます。」
「同時に、個人に焦点を当てた物語でもあります」とレベルデザイナーのCatherine Stewartは言います。「モンスターやSFの要素があるにも関わらず、個人に焦点を当てた旅に軸が置かれているため、プレイしている側も親近感がわきます。」
高い精度
この象徴的なストーリーに手を加える機会を得たリメイク版の開発チームは、「どのような場面に手を加えてはいけないか」ということが非常に重要になることを理解していました。「どの部署も同じ理念を持ってアプローチしました。」とCatherineは言います。「直す必要が無いなら、無理して手を加える必要は無い、という理念です。大部分においては、このゲームを素晴らしい作品たらしめている根幹的部分を残し、残りの問題点のある部分のみを改修していきました。この線引きをするのは難しいことも多かったのですが、最終的に良いバランスが取れたと思っています。」
そのため、多くの変更は一貫性と継続性を損なわないために行われました。「『Dead Space』というタイトルには、数多くの物語が存在します。」とクリエイティブディレクターのRoman Campos-Oriolaは言います。「オリジナル版の後に発売されたシリーズ、書籍、コミック、映画などがあるのです。そこで、他の作品との連動制を高めるために、リメイク版に物語を追加したり、調整する作業を行いました。」
他にも、既にあるものに肉付けをする調整も行われました。「また、サブキャラクターの出演頻度と関与性を高めたり、より深い個性を与えたりもしました。」とRomanは続けます。「その中には、ニコールやマーサーのような重要なキャラクターもいました。他にも、オリジナル版の音声ログにのみ登場していたジェイコブ・テンプルやエリザベス・クロスといったキャラクターにも役割を与えることができました。」
「キャラクターに背景、深み、動機を与えることで、キャラクター同士の繋がりに今まで以上に意味を持たせるのは重要です。」とJoelは言います。「そうすることで、新しいサイドクエストを通じてプレイヤーは非常に説得力のあるストーリーを追うことができるのです。」
「また、サイドクエストでは船が混乱に陥っていく様子を少し詳しく見ることができます。」とCatherineは言います。「少し後戻りしながら、探索していく感覚です。」
「なので、ストーリーのベースは近しいものがありますが、プレイヤーが何をするか、誰と接触するかによって異なる体験をすることができます。」とJoは言います。「キャラクターの数多の変化が、物語に波及していくのです。お気に入りのドライブコースを走りながら、面白い寄り道ができるといった感覚です。そして、昔から作品を知っているプレイヤーにとっては少し驚くような展開が待っているかもしれません。」
新ボイス
プレイヤーが気付く「Dead Space 2」以降の大きな変更点として、アイザックに声が付くようになったことが挙げられます。「私は今でも、とあるポッドキャストを覚えています。」とキャサリンは言います。「オリジナルの『Dead Space』において、アイザックはなんでも直しくるように指示される、過度に働かされている最高責任者のような扱いでした。彼は熟達したエキスパートなので、その扱いを受けていことに違和感があったのです。」
「そこで、アイザックをイベントや問題解決にもう少し関与させるようにしました。」とRomanは語ります。「アイザックが会話に参加するようになりました。そうすることで、キャラクターに深みと、主体性を持たせることができるようになったのです。」
「アイザックが問題解決に向けて思考したり、『エンジニア』として策を練ったりする姿勢を見せたかったのです。」とJoelは付けたします。 「加えて、アイザックを中心として様々なドラマが繰り広げられる中で、反応しなかったり、本人が認識していないような雰囲気を出してしまうと、アイザックが現実から少し切り離されたような錯覚が生じてしまいます。」
「プレイヤーが感じていることと、アイザックの感じていることが乖離してしまうことは避けたかったのです。」とキャサリンは言います。「なので、アイザックにボイスを与え過ぎないようにするのは非常に重要なポイントでした。」
「まあ、プレイヤーとキャラクターの感情を限りなくシンクロした状態に持っていくのは、ゲームのストーリーにおいての終着点でもあります。」とJoは言います。「キャラクターのボイスをリアルに感じてもらうことはもちろん大事ですが、同時にエンターテインメントとして楽しんでもらう必要もあります。もし楽しめないなら、プレイする意味はありませんよね?しかし、それは必ずしも面白くある必要はありません。無理に冗談を言うのではなく、ただ人間らしくあるだけで緊張感が解けることもあるからです。」
となれば、アイザックの声を誰にお願いするかは難しい問題ではありませんでした。「もう、誰にするかは決めていました。」とRomanは言います。「Gunner Wrightさんです。彼は『Dead Space 2』、『Dead Space™ 3』のアイザック・クラークを演じています。アイザックの顔であり、声も担当している人です。なので、ある意味では『Dead Space』の最初の物語にアイザックが登場するのは初めてなのかもしれません。この事実だけでもワクワクしますよね。」
常に捻りを加える
好きなキャラクターやストーリーについて尋ねると、チームメンバーからはそれぞれ違う答えが返ってくるのが印象的でした。「個人的には、マーサー博士のセリフを書くのが一番好きでした。」とJoは言います。「少し変化を加えたキャラクターなので、恐らく最も苦労したキャラクターの一人でしょう。彼のセリフは5回ほど書き直したと思います。ただ、成果物には満足していますし、マーサー役の方は本当に素晴らしい演技をしてくれました。」
「私も、彼の演技は本当に好きです。」とRomanは言います。「キャラクターの肝を完全に押さえた演技をしてくれました。ただ、私が一番気に入っているシーンは、マーサーとニコールの対立に繋がるサイドクエストの最後にあります。二人の間に緊張感があり、その解決方法も興味深いので、あのシーンはかなり面白い出来になっていると思います。」
「アイザックにとってニコールが何故あれほど重要な存在だったかを示すために、ニコールを成長させていくことができたのは良かったと思います。」とJoelは言います。「キャラクターとしての彼女の強さや有能さを見せることができました。アイザックにとって、彼女は狂気的な世界を突き進むためのモチベーションなので、ニコールがどれほど重要な存在なのかをプレイヤーに理解してもらう必要があったのです。」
「私はケンドラも好きです。」とCatherineは言います。「彼女のセリフの中には、ただ単純に素晴らしいとしか言えないものがあります。すべてが崩壊して上手くいかない中で、苦悩する彼女は見ごたえがあります。」
「そうだ!」とJoが叫びました。「とある死のシーンで初めてイテレーションを行ったときに、恐らくRomanから『このシーンにはDead Spaceのグロさが足りない。』というフィードバックをもらったんです。私は『私ならもっとグロくできるよ!』と応えました。そんなやり取りもあったので、今ではその死のシーンがとても気に入っています。とても楽しい死のシーンを書いた時ほど、ライターがキャラクターを愛していることが分かる瞬間はありません。」
「いつも新しい何かがあります。」とRomanは笑いながら言います。「いつも何かが変化しているんです。常に何かが起こり、常に捻りが加えられていきます。」
この素晴らしいストーリーは、PlayStation®5、Xbox Series X|S、PCで「Dead Space」がリリースされる2023年1月27日からご自分で体験できるようになります。それまでは、このサイトで公式ロンチトレーラーと、公開予定の開発チームの裏話をチェックしましょう!