「Dead Space™」開発秘話 #6:振り出しに戻る
「Dead Space」のリメイクを手掛けたMotive開発陣がプロジェクトの初期段階に起きたことについて振り返ります。
Motive™のリメイク版「Dead Space™」リリースに向けて、私たちは開発秘話にて、リメイク(#1)するとはどういうことなのかについて話しました。ネクロモーフ(#2)、イシムラ(#3)、インテンシティ・ディレクター(#4)を実現した新しい技術に関してや、ストーリーの重要性(#5)などについてです。そうして、ゲームは小さなスタジオから世界へと羽ばたいて行ったのです。本日は、プロジェクトの最初期を振り返って次の質問にお答えします。そもそも、「Dead Space」リメイクはどのように始まったのでしょうか?
ゼロからのスタート
多くのゲームがそうであるように、このプロジェクトは「次のゲームは何?」という簡単な質問から始まりました。
「『Star Wars™: Squadrons』の開発終了の目途が立ったころです。チームは次のプロジェクトを検討していました。」とシニアプロデューサーのPhilippe Ducharmeは言います。そして、MotiveのゼネラルマネージャーのPatrick Klausがチームリーダーと会議した際、モントリオールで「Dead Space™ 2」の開発に携わっていたアートディレクターのMike Yazijianも参加していました。Mikeは「Dead Space」を作りたがっていました。
「夢が実現した瞬間でした。大好きなシリーズにもう一度携われる機会ができたのです。すぐに取り掛かりました。」とMikeは言います。
チームの主要スタッフはすぐに集まりました。 「『Dead Space』について一本の電話をいただきました。」とクリエイティブ・ディレクターのRoman Campos-Oriolaは語ります。あちらの話を遮りながら「もちろんやります! 『Dead Space』なんですよね? やらせてください。」と応えました。もちろん、人事に関わることや議論、ミーティングなどはありましたが、最初の発言は「『Dead Space』ならやります。入れてください。」でした。
Philippeも同じように話していました。Patrickとの採用ミーティングではスタジオと共にその文化、そして価値観について徹底的に話し合いました。「私は『分かりました、Motiveなら心配ありません。』と応えました。」とPhilippeは言います。「少し裏をさぐるように『でも、どんなゲームになるんですか?』と質問したところ、彼は『いくつか可能性はありますが、Dead Spaceのリメイクになるかもしれません。』と言ったのです。一瞬だけ考えて、『分かりました、契約書はどこですか? どこにサインすればいいんですか?」と尋ねました。
主要メンバーのRomanとPhilippeがMotiveにやってきて出来上がった小さなチームは、リメイクを実現するために100人以上の大所帯に成長しました。そして、シリーズに対する熱意は、組織の隅々まで行き渡ったのです。「チームメンバーの多くは『Dead Space』の制作のためにMotiveに来ました。」とMikeは言います。「彼らはオリジナル版の大ファンだったのです。なので、私たちにとってはひときわ特別なプロジェクトになりました。ファンがファンのために作ったゲームなんです。」
大きな期待
オリジナル版をプレイしたことがあるなら、チームがこのゲームに愛を注ぎ込んだことが分かるかと思います。プレイしたことが無くとも、どのリーダーも喜んで布教活動をすることでしょう。「この世には『Dead Space』のようなゲームはあまり存在しません。」とMikeは言います。「このゲームを際立たせているのは、SFとホラーの完璧な融合と、よどみない音声と映像です。不気味な雰囲気、イシムラとネクロモーフのデザイン、部位を無力化するシステム、物理演算、没入感のあるユーザーインターフェースなど—」
Romanは「他には無い組み合わせと言えます。SFとゾンビ、そしてラブクラフトに出てくるような心理的恐怖が上手く融合しています。通常の作品では、これらのうち2つくらいの要素が組み合わさっているだけです。しかし、3つすべてのホラー要素が組み合わさったユニークな作品が『Dead Space』なのです。」と、言います。
Philippeは「また、他には類を見ない没入感があります。ビジュアル、サウンドの設計、ゲームプレイのすべてに夢中になれるため、プレイ中は他のことを忘れてしまうほどです。このゲーム体験を邪魔するものはありません。アイザックになりきったような感覚になり、彼の生活を体験することができます。私がプレイヤーとしてこのような感情を抱くゲームはごく少数でした。実のところ、このゲームの作業に着手したとき、最初にやったことはオリジナル版のゲームを通しプレイすることでした。そして、その時に感じた恐怖を今でも覚えています。素晴らしい演出でした。なので、オリジナル版のゲームには非常に多くの思い出があるのです。」と付け加えました。
これだけオリジナルが評価されているのに、なぜリメイクしようと思ったのかと不思議に思う方も多いかと思います。その答えは、「進化」です。「15年という歳月はそれほど長くは感じないかもしれませんが、技術の面では大きな進歩がありました。そして、これらの進歩した技術は『Dead Space』を素晴らしい作品たらしめている要素と合致するのです。照明、音声、雰囲気、ハードドライブの転送速度などの技術的進歩によって、本作のゲーム体験をさらに深めることができます。」とRomanは語りました。
「さらに、業界自体も進化しました。サバイバルホラーというジャンルも進化しています。当時よりも遥かに大きな市場となりました。」とPhilippeもそう言います。
そしてMikeもこう話しました。「そして、私たちは新しい世代のゲーマーの皆さんに、私たちが2008年に体験した時と同じ体験をしてほしいのです!『Dead Space』を初めて体験される方に、4K解像度、ロードなし、視界全体に影響する霧、3Dオーディオ、レイトレーシング、フルダイナミックライティング、60フレーム/秒といった最新の技術をすべて経験していただきたいのです。これらのすべての要素は、プレイヤーの皆さんに、より没入感のある体験をお届けするために必要なのです。オリジナル版を既にプレイしているプレイヤーには、新たなサプライズ、追加のストーリー、そしていくつかのイースターエッグが用意されています。もちろん、オリジナル版の満足感のあるゲームプレイは健在です。」
目標の設定
多くのレビュアーから、本作がオリジナル版を尊重しながらも、それを改善するという難関をクリアした作品に仕上がっているとフィードバックをいただいています。「このゲームは、オリジナル版の『Dead Space』の、いわゆる綺麗な思い出を体験することができます。「以前と同じものをただ再現するのではなく、綺麗に残った思い出をなぞるように体験することができるのです。ひとつ、とても面白いのは、ゲームの映像を見た人が、『そうそう、いい感じ! 昔に見たまんまだ!』と言うことがあるんです。そして、実際の昔のイメージを見せると、『マジかよ!』と驚いてもらえます。驚いてもらえれば、私たちはリメイクに成功したということです。もし、このプロジェクトにひとつの目標があるとすれば、それは、オリジナル版に敬意を表し、その思い出を取り込むということです。」
「そうです。オリジナル版を尊重し、現代のゲームファンに向けてそれを強化したりアップデートしたりしつつも、シリーズの根幹的部分は崩さないことを大事にしてきました。オリジナル版のファンとして、私たちはリメイク版の各要素に最新の注意と敬意を払って取り掛かりました。」
「最初にチームと話したことは、他の開発会社に参考にしてもらえるようなリメイク作品を作る、ということでした。」とPhilippeは発売前に私たちに語りました。「何かのゲームのリメイク版を作るに当たり、本作を越えるべき目標として設定してほしかったのです。そして、開発の初期段階で、次の瞬間には何が起こるか分からない緊迫した状態で船内を歩くという体験を実現することに成功したのです。これぞ『Dead Space』という気分でした。これは非常に重要なことで、プレイヤーの皆さんもきっと『そうそう。こんな感じのゲームを期待していたんだ。』と言ってくれるでしょう。
プレイヤーからの反応を見るに、これは非常に的確な予測だったと言えるでしょう。
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