氷華の蜜がにじみ出し、雪風が耳をなでるとき。
見て!ジャベリン達が速さを競い合う。そう氷節がやってきた!
フロスト・フレンドがプレゼントを持ってやってくる時期が近づいてきました。
あなたは今年一年良い子にしていましたか?
フロスト・フレンドの目はごまかせません。
彼には小さなお供の兵隊達がついています。
箱に入った小さなコロックスたちの大きな群れ。
彼らは暖炉の上から、鍵の穴から、あなたを見守っています。
「どうしてコロックス?どうして箱の中?」きっと不思議に思うでしょう。
だから今日はその話をしましょう。
それは幾度か前の氷節
ある小さなアンリサウルが雪の中で転んでしまった時のお話です…。
小さなコロックスのコーギンは友達の横に座りました。
同じく小さなアーデックはベッドで療養中です。
「脚が痛いよ。今はとっても落ち込んでるんだ」
小さなアンリサウルは言いました。「どうしたらいいんだろう?」
「脚の骨が折れちゃって歩けないんだ。
フロスト・フレンドに会いに行って
氷節のプレゼントをおねだりすることもできない。一年ずっと良い子にしてたのに!
これじゃあ、欲しかったジャベリンのおもちゃがもらえない!」
「そうよ。あなたは良い子にしてたわ」、コーギンは答えました。
「学校ではちゃんと言うことを聞いて、嘘だってついてないはず。
セリナって人間と一緒に遊んだせいで私がママに怒られた時も
一緒に怒られてくれたもんね!」
「あなたは私を助けてくれた、とっても優しい友達よ。
だから私が今からフロスト・フレンドに会いに行ってあげる!」
そしてコーギンは家に帰ると、カバンに荷物を詰めて母親に告げました。
「フロスト・フレンドに会いに行ってくるね」「そう、分かったわ。楽しんできなさい」
コーギンは進む方角を決めると
友達のためにフロスト・フレンドを探しに向かいました。
谷を抜け、野を越えて、薄く雪の降り積もる大地を歩きました。
やがてたどり着いたのは、見覚えのある景色。やっぱりだわ!彼女はそう心の中でつぶやきました。
たしか、町の名前はポンティエックス。覚えてるもの—―。
あの見張り小屋は学校の本にあった通り。
雪の中から明るいピンク色がポツポツと顔をのぞかせています。
見て、すてきなお花!あれってすごく美味しいんだから。
するとそこで花を摘んでいる女性がいることに気づきました。
あの人のお花かしら?分けてもらえないか聞いてみよう。
「まあ大変!コロックスよ!」背の高い女性は叫び声を上げました。
「私を食べないで!すぐに帰るからお願い!」
「馬鹿を言わないで」、コーギンは言いました。「私は植物しか食べないわ」
「あなたの持っているお花みたいなね。できたら分けてもらえませんか?」
「もちろんよ」、女性は言いました。「まだ、たくさんあるわ。
毎日、お店を閉めた後に
このお花とか余ったお花を
お年寄りに届けて元気づけてるの」
「まあ、すてき」、コーギンは言いました。「私は一つでいいわ。
それなら、あなたのお仕事が終わったあとにも十分に残るはずだから」
「ところで、フロスト・フレンドが近くに住んでいるか知りませんか?」
女性は答えました。「いいえ、このあたりで彼を見たことはないわ」
「そうなんだ。お花をどうもありがとう!私はもう行かなきゃ。
フロスト・フレンドに会ったら必ず伝えるわ。
もしよければだけど。あなたがお花を配ってるって。
彼はきっと優しいあなたに贈り物をくれるわ」
コーギンは花を口にくわえると、四本の脚で駆けていきました。
町から離れて、今度は北でしょうか?南でしょうか?
いっぱいいっぱい歩いた後、呼びかける声が聞こえてきました。
「おい、壁の外で何をしてるんだ?」
一人のフリーランサーが怯えている小さな子供を見下ろしています。
そこはフォート・タルシスの壁の外、吹きさらしの中です。
コーギンは心配になってしまいました。フリーランサーはとても殺気立った様子だわ。
それに、あ!ウルヴェンがいる。これはよくない。
「ちょっと、ウルヴェン!」彼女は呼びかけました。「そこで何をしてるの?」
ウルヴェンは彼女を見ると、あわてて逃げていきました。
「冗談だろ!コロックスだ!」フリーランサーが叫びました。
「ウルヴェンよりもヤバいぞ。早く中に戻ろう!」
コーギンはため息をついて口を挟みました。「怖がらないでよ。
フロスト・フレンドが近くに住んでいるか知りたいだけなの」
「もう大丈夫だ!」フリーランサーはそう言って、子供を掴みました。
「この獣には傷つけさせない。しかし、ずいぶん荒れた獣だな!」
フリーランサーが子供を肩に担ごうとする中
子供はひらめいて叫びました。「フロスト・フレンドが住んでるのはもっと寒い場所だわ!」
考えてみれば当然です。コーギンが笑みを浮かべていると、彼らはそそくさと姿を消していきました。
ただ、今日中にフロスト・フレンドが見つかればいいけど。
まあいいわ、彼に会ったらちゃんと伝えないと。
コーギンはまた雪の中へと道を戻りながら思いました。
あの女の子は怖がってたみたいだけれど、私を助けてくれようとしてた。
フリーランサーはあの子を助けたけれど、ウルヴェンの相手には
ちょっと不足だったかも… 私が間に合ってよかった!
フロスト・フレンドはあの二人にもプレゼントをくれるはずだわ。
ふたたび出発したコーギンは、やがて深い雪の中を進むことになりました。
冷たい風がすさまじい音を立てて、吹き付け始めています。
彼女は歩き続けましたが、次第にしょんぼりしてきました。
その時、「この先、サード・ホープ」と書かれた道案内の板を見つけたのです。
「希望だって」、彼女はほっと息をつきました。
しかしそれも、男の鋭い叫び声ですぐに遮られてしまいました。「待て!泥棒め!」
いったい何かしら?コーギンがそう思うと同時に、地面が揺れました。
爆発であたりが照らされ、男たちが逃げ惑っています。
「おい気をつけろ!」一人が怒鳴りました。「そいつは爆発する!
途中で冷却剤を爆発させたら
盗み出した意味がなくなる。ギャングの名折れだ」
盗み!?コーギンは素早く考えました。それなら、逃がさないんだから!
「すぐにそれを離しなさい!」コーギンは駆けながら声を上げました。
彼女を目にした最初のギャングが悲鳴を上げます。「なんてこった!」
「コロックスの突進だ!もういい、逃げろ!」
「そうよ!いっちゃえ!」コーギンは鼻を鳴らしました。「盗みなんて許さないんだから!」
そうしていると高く伸びた木々の間から、新しい声が聞こえてきました。
彼女は冷たい空気の中、息をひそめて声を聞き取ろうとしました。
「おい見ろ、冷却剤があった。ところでギャングはどこに行ったんだ?」
「いないなら、それでいいさ」男が言いました。「とにかく集めて戻ろう」
こっちを警戒しているみたい。コーギンは少し残念な気持ちになりながら思いました。
彼らを驚かせたくなかった彼女はそのまま立ち去りました。
とはいえ、フロスト・フレンドにギャングの悪さを報告するのは決まりです。
絶対にプレゼントはなしね。あり得ない。
けれど、フロスト・フレンドの家が見つからなければ意味がありません。
コーギンは困った顔を浮かべると、ふたたび歩き始めました。
何も見つけられないのかも… そうため息をつきました。
ひと筋の涙が頬を伝い、やがて凍りました。
コーギンはさらに何時間も何日も探し続けました。
そして白くかすんだ向こうに一つの光を見つけたのです。
ペパーミントと温かくて美味しいシチューの匂いが漂ってきます。
やがて一つの小屋が見え、彼女は近づいていきました。
窓をのぞき込むと、そこには…?
フロスト・フレンドその人です!座ってお茶を飲んでいます!
「こんにちは!」コーギンは呼びかけました。「どうか怖がらないでください!
私はただの小さなコロックスです。お伝えしたいことがあって来ました!」
フロスト・フレンドは笑顔を浮かべて戸口へやってきました。
「ああ、君がコーギンだな。君のことは少し前から知っていたよ。
牙も蹄もすごく冷たくなってしまっているに違いない。
中に入って熱い花茶でも飲むかね?」
「本当に?ありがとう!」彼女は言いました。「あなたがいてくれてよかった!
私のお友達のアーデックが、今年はあなたのもとに来られないんです。
脚の骨を折ってしまって… けれどずっと良い子にしていました。
それと森の中でいろいろな人にも会いました!」
そしてお茶を飲みながら、ここまでに見てきたすべてを話しました。
善い人々のこと、悪い人々のこと。
フロスト・フレンドはすべてを聞いてくれました。
けれど何かが変です。「お加減でも悪いんですか?」
「ああ」、フロスト・フレンドは答えました。「素直に話しておこう。
医者から働き過ぎだと言われたのだ。
私にはずっとずっと昔から持っているレリックがある。
その力を使って雪の中で贈り物を届けてきたんだ。
大変だが、一年に一夜のその仕事は問題ない。
私の気持ちを疲れさせているのは、一年の残りの部分なのだ。
誰が良いことをして、誰が悪いことをしているか、見ていなければならん。
私も昔ほど若くはない。
けれど、コロックスのお嬢さん。君は若くて強い!
ここに来るまでの間に、ミラスの住人について
どれだけの知らせを集めて届けてくれたか。
ああそうだ!君なら何夜でも何日でも、見守っていられるに違いない!」
「ずっと座ってみんなが眠るときまで見張っているの?」
コーギンは顔をしかめて言いました。「それって怖くない?」
フロスト・フレンドは傷ついた顔で答えました。「それはいくらなんでも言い過ぎだ。
私が人の秘密を漏らさないことは、誰でも知っている」
「そういうことじゃないの」、コーギンは言いました。「もう帰らなきゃ。
雪の中で迷子になっていないか、ママが心配する。
私はただの一頭のコロックスでまだ子供よ。
百万の私がいたら、よかったのにね」
「それだ!」フロスト・フレンドが叫びました。「まったく、君は素晴らしい!
私の特別なレリックは遠くでも近くでも自由自在だ。
なら君を百万のそのまた百万にだってできるだろう!
一つの家に一頭のコロックス。ああそれだ!それならいける!」
フロスト・フレンドは息をついて笑顔を浮かべました。「さて、それでは…
君はすでに私の仕事を一部肩代わりしてくれた。
君が会った人達にプレゼントを贈ろう…
ただし、ギャングは除いてな。彼らにはまだプレゼントはなしだ。
ああ、ここにジャベリンのおもちゃがある。これでいいかね?」
「ええ、それよ!」コーギンは声を上げました。「アーデックは青がとても好きなの。
知ってたのね!」「もちろんだとも。
だが、万が一ということもある。君は何日もかけてここまで来たんだ。
君の心はとても大きい。その友情は本物だ。
だから、君には君のように特別な贈り物を贈ろう」
フロスト・フレンドは裏にある部屋に向かいました。
ゴロゴロという音に続いて、ピシャンという大きな破裂音。
そして急いで戻ってくると、少し毛が焼け焦げた手で
台に載せられた透明なガラスの球を差し出しました。
球の中では、一面が雪に覆われた野原の真ん中で
小さく花が群れるように咲いていて、その周りに雪が舞っていました。
「私のレリックを使って、氷節をここに閉じ込めた。
一年中、氷華の花を食べられるようにね」
「うわ、ありがとう!」コーギンは味を思い出しながら答えました。
「あなたとの出会いと私の旅の美味しい思い出ね!」
コーギンはフロスト・フレンドの手を借りて荷造りをしました。
道中、はむための新しく手に入れた氷華の花も忘れずに。
「私が落ち込んでいるときに、君が訪ねてきてくれてよかった。
これで胃を傷めずにすむとすれば、君のおかげだ!」
コーギンは家へと帰り、ママは彼女の頬にキスをしてくれました。
一方のフロスト・フレンドは何週間もレリックをいじくりまわしていました。
たくさんの試行錯誤(と手ひどい火傷をいくつか負った)のち
彼はたくさんのコロックスを生み出し、彼らを箱に収めました。
あなたの家に大切に置かれているのは、そんな一頭。
あなたの行いをずっと見守り、耳を傾け続けています。
だから、壁の中にとどまって、お手伝いをサボらないようにしましょう。
あなたのお家のコロックスはすべてを見ています。
「Anthem」のライター陣、可愛いコロックスの絵を描いてくれたDerek Watts、辛抱強く待ってくれたCarlo Lynch、そして鋭い編集眼を持つRyan Cormier、韻を踏むことに一緒にこだわってくれたPatrick Weekes、サポートしてくれた全員に感謝を。