「Dead Space」開発秘話 #4:インテンシティ・ディレクター
「Dead Space」リメイク版を手掛けた開発チームは、プレイヤーが常に手に汗握る展開を楽しむことができる、新しいシステムを導入しました。
人は何を怖がるのでしょうか?それは未知のものだったり、既知の恐怖だったり、不確実なものだったり、避けられない災害だったりします。「Dead Space™」では、これらの恐怖の原因を「雰囲気」というゲームの柱となる要素で結び付けています。オリジナル版の発売当時、ゲーム内の雰囲気は全世界から賞賛された要素の一つでした。なので、Motive™がこの象徴的なサバイバルホラーゲームのリメイクに着手した際、デザイナーたちはこの重要な要素を高い水準で再現することを目指したのです。
「ホラーゲームにおいて、雰囲気ほど重要なものは無いと思います」とアソシエート・リード・レベルデザイナーのSteven Ciciolaは言います。「環境、緊張感、手に汗握る展開などの要素がすべて組み合わさることで、ホラーゲームに必要な雰囲気が出来上がるのです。」
既に完璧な「雰囲気」を作り上げていた伝説的なゲームをどう改良したのですか?「様々な改良を実装しました。」とシニア・ゲームディレクターのEric Baptizatは答えます。「ビジュアル、オーディオ、ライティングなど、すべてが進化しています。これらの要素に深みを増すことで、プレイヤーのストレスや興奮などの感情をより細かくコントロールできるようになったのです。」
「例えば」とリード・ライティング・アーティストのMichael Yeomansと始めます。「ゲーム内で光と影は重要な役割を持っています。プレイヤーは明かりのあるエリアから次のエリアに移動する際、影のある場所は危険だと感じるのです。ただ、船は破壊された状態なので照明がすべて機能している場所は限られています。なので、明かりが完全に消えてしまうという恐怖感が常に頭をよぎるのです。実際に、突如として明かりが消えてしまうこともあります!」
ストレスエンジンの構築
そういった体験は、恐怖感を与えるイベントを生成する新システムによって実現しています。このシステムは、今回おこなったフルリメイクの最も大きな特徴でもあります。体験をその都度カスタマイズし、プレイヤーを圧倒することなく緊張感を維持してもらえるように、雰囲気を調整することができるのです。この機能は、インテンシティ・ディレクターと呼ばれています。
「インテンシティ・ディレクターは、常に何かが起きている状態を維持しながら、プレイヤーのストレスレベルをコントロールすることができるシステムです。」とEricは言います。「感情と緊張感をコントロールして、プレイヤーが常に最善の注意を払いながら進むよう促すのです。」
「コンテンツ管理、オブジェクトの出現、そしてペースを制御できるシステムです。」とシニア・システムデザイナーのDan Kimは言います。「数え方にもよりますが、システム内には1200以上のイベントが用意されており、組み合わせも膨大です。オーディオ、ライティングの変化、霧や蒸気、敵の出現など様々な要素がすべて組み合わさることで、まるでその場で作ったかのような状況を生み出します。」
「開発開始時から計画していました。」とリード・シニア・ソフトウェアデベロッパーのDavid Vincentは語ります。「すべての要素に触れることができるにも関わらず、映画のように感じことができる空間を作ることを目標としてきました。プレイヤーが特定の部屋から違う部屋へ移動する間のイベント密度をモニタリングするのです。少し音が鳴るだけで何も起こらない部屋もあります。」
「しかし、別の部屋に入ると突然スラッシャーが通気口から出てきて、さらに明かりが消えて、さらに部屋に霧がかかる場合もあり、非常に緊張感のある状態へと変化するのです。その緊張感のあるイベントの後はプレイヤーに休憩する時間を与えます。連続して緊張感のあるイベントが発生し続けることが無いように、緊張の起伏をトラッキングしているのです。そういったイベントが連続して発生してしまうと感情が疲れてしまい、プレイヤーがもうプレイしたくなくなってしまうためです。」
「しかし、何が起こるか分からないという不安感をプレイヤーに与え続けることも重要です。」とオーディオディレクターのOlivier Asselinは言います。「例えば、通気口からネクロモーフの音が聞こえて、次に通気口の壊れる音が聞こえ、そしてネクロモーフが出現したとします。違う場所で同じ音を聞いて通気口からネクロモーフが出現しなかった場合、その時は何か違うことが起こると予想するでしょう。通気口内のネクロモーフの音が無いにも関わらず、通気口の壊れる音がして突然ネクロモーフが現れたら、予想ができないのでビックリすると思います。そして、通気口が壊れて何も出現しない場合は、何か違うイベントを追加していきます。プレイヤーが予想する一つの結果に対して、様々な要素や発生方法を用意しているため、毎回違う結果が導き出される可能性があるのです。」
「つまり、どのプレイヤーも個別の体験ができるということになります。」とMichaelは言います。「何が起こるか絶対的な自信が持てないため、常に恐怖感を持ちながらプレイすることができるのです!」
いつまでも安心できない
このシステムを正しく動作させるために、何度も何度も試行錯誤を繰り返して修正を重ねたとデザイナーは語ります。ただ、この努力に見合った結果をインテンシティ・ディレクターはゲームにもたらしました。開発者たちもそのアウトプットには驚いたそうです。
「開発チームは定期的にチャプターをプレイし、何が怖かったかをレビューします。」とEricは言います。「そして、ステージディレクターに『あれはよかった、あれは不気味だった、あの手法は素晴らしかった!』といったフィードバックを提供していました。驚いたのは、その体験が意図して作られたものではなく、インテンシティ・ディレクターによって生み出されたものだったということです。ちょうどよく、完璧な仕上がりでした。」
「最も驚いたのは、システムが想像以上に早く完成したことです!」とDavidは言います。「ホラー映画を見ると、すべてがナノ秒単位で調整されていることに気付くと思います。すべてが綿密に計画され、描写されていきます。ダイナミックジェネレーターでその緻密さを再現するのは非常に困難だと感じていたのです。不可能とすら感じていました!ですが、結果的に同じような感覚をゲーム内で再現することができました。」
システムは開発チームを驚かせるだけでなく、怖がらせることにも成功しました。「正直なところ、システムに関する完璧な知識をもってしても、発生したイベントに恐怖することがあります。」とDanは言います。「霧のかかった真っ暗な通路を進むと背後に敵が数体出現し、その敵に対応するために振り向くとまた背後に敵が出現する—これは『Dead Space』の典型的な演出ですが、システムによって自然に、そして予測不可能なタイミングで発生するのです。そして、毎回怖がらせることに成功します。」
「それと同じくらい強烈だと思うのは、薄暗く蒸し暑い、小さい機械音と少し先に点滅する明かりしかないほとんど無音の廊下を歩いている時に……絶対に何かが起こると予想しているものの、何も起きない時です!緊張感のペースがちょうどいいと感じた時こそ、ホラーゲームをプレイしていることを実感するでしょう。」
このインテンシティ・ディレクターは、PlayStation®5、Xbox Series X|S、PCで「Dead Space 」がリリースされる2023年1月27日からご自分で体験できるようになります。それまでは、このサイトで開発チームの裏話をチェックしましょう!